オルタネーターリップル電圧の波形観測
リップル電圧とは?
リップル電圧とは、交流電圧をダイオードで直流に整流した際に残る、微少な電圧変化のことです。
オルタネーターは、エンジンの動力によって内部のローター(電磁石)が回転することで、その外側にあるステーターに交流の電力が発生します。ステーター
は3つのコイルで構成されており、三相交流の起電力を得ていますが、このままでは自動車の電装品に使えないため、レクティファイアー(ダイオード)によって直流に整流して出力しています。(三相全波整流)
オルタネーターの発生電圧は通常6個のダイオードで整流されており、負荷に対して高電位側に3個、低電位側に3個付いています。電気を一方向にしか流さないダイオードの特性を利用して直流に整流しています。
下図は、3つのステーターコイルで発生した位相が120°ずつずれた三相交流の電圧波形と、整流後の出力波形、ならびに回路の電気の流れを示したものです。
高電位側は最も電圧が高い相に接続しているダイオードが導通し、低電位側は最も電圧が低い相に接続しているダイオードが導通します。
波形図のA点において、最も電圧が高いのはコイルV1、最も電圧が低いのはコイルV2であるためダイオードD1とD5が導通します。出力電圧はコイルV1とコイルV2の電圧差なので、コイルV2の(-)電圧をコイルV1の電圧に上乗せしたような形になります。(波形図赤矢印部)
最も電圧の高いコイルと低いコイルは周期的に変わります。❶区間はダイオードD1とD5が導通しますが、❷区間になると最も電圧の低いコイルがV3になるため、ダイオードD1とD6が導通し、❸区間になると最も電圧の高いコイルはV2になるため、ダイオードD2とD6が導通します。
この動作が周期的に繰り返されることで、整流後の出力波形は山なりが連続した波形となります。この山なりの連続した波形がリップル電圧の波形です。
ちなみにリップル(ripple)とは、さざ波という意味です。
正常なオルタネーターのリップル電圧は、同じような山なり波形が連続しますが、ダイオードやステーターコイルが故障すると、リップル電圧の波形に特徴が現れます。(下図参照)
オシロスコープを使って波形観測することで、オルタネーターの不良原因を見つけ出すことができます。リップル電圧が異常のままでは、充電不足になったり、車載電装品やバッテリーに悪影響を及ぼしますので、オルタネーターの交換が必要になります。
こちらの記事では、カイセのオシロスコープ(型式:SK-2500)と別売品のリップル測定テストリード(型式:100-74)を使用して、オルタネーターリップル電圧の波形観測方法をご紹介します。
■使用するテスター
オシロスコープ(型式:SK-2500)リップル測定テストリード(型式:100-74)※別売品
※SK-2500には別売品セットの設定があり、リップルセット以上には100-74が含まれています。
ワニグチクリップ(型式:940)※別売品波形観測方法
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❶波形観測の前に、ベルトやプーリーに異常が無いことを確認します。
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❷SK-2500のCH1プラス入力端子にリップル測定テストリードの入力プラグ(赤)を、マイナス入力端子(COM)にテストリードの入力プラグ(黒)を差し込みます。
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❸テストリードの先端には、赤と黒のワニグチクリップ(別売品)を差し込みます。ワニグチクリップを使うことで、オルタネーターやバッテリーの端子に固定することができます。
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❹SK-2500の電源をONにして、自動車整備リスト機能から「オルタネーターリップル波形」を選択します。※自動車整備リスト機能は、電圧軸と時間軸の設定を自動で行うSK-2500特有の機能です。他のオシロスコープで手動設定する場合は、電圧軸を100mV、時間軸を1mSにします。
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❺エンジンを始動して、ヘッドライトON、エアコンをMAXにします。(負荷をかけることで波形が見やすくなります)
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❻赤色ワニグチクリップをオルタネーターのB端子に接続します。B端子は、バッテリーにつながる太いケーブルが付いている部分で、カバーを外した内側にある金属部に接続します。※オルタネーターB端子に手が届かない場合は、バッテリーのプラス端子に接続してください。
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オルタネーターB端子
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バッテリープラス端子
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❼黒色ワニグチクリップはボディアース、またはバッテリーのマイナス端子に接続します。
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❽この状態でオシロスコープにリップル電圧の波形が表示されますので、HOLDスイッチを押して画面表示を固定します。山なりの連続した波形なので正常な状態です。(故障時の波形例はこちら)※波形が見にくい場合は、電圧軸・時間軸を微調整してください。※充電制御車の場合は、オルタネーターが発電を停止していることがありますのでご注意ください。