オルタネーターの出力電圧&出力電流を1台のクランプメーターで同時に測定
オルタネーターの役割と構造
オルタネーターはベルトを介してエンジンとつながっており、エンジン始動とともにその動力を利用して発電し、クルマの走行に必要な電力を供給しつつバッテリーにも充電される仕組みになっています。
エンジンの動力によってオルタネーター内部のローターコイル(電磁石)が回転することで、その外側にあるステーターコイルに交流の電力が発生しますが、多走行車になると、ローターコイル(電磁石)に電流を供給する接点となるブラシの摩耗による接触不良や、レクティファイアーやレギュレーターの故障でオルタネーターの出力が低下してしまうことがあります。
出力が低下すると、新品に交換したばかりのバッテリーが上がってしまったり、走行中のエンストなどで、思わぬ事故につながる恐れもあるためオルタネーターの点検は大切です。
電力の計算式は、W(電力)=V(電圧)×I(電流)であるため、オルタネーターの出力を確認するには、電圧と電流を測定する必要があります。
電圧と電流を同時に測定可能なカイセのクランプメーターSK-7720 / 7722による測定方法をご紹介します。
■使用するテスター
直流Aと直流Vが測定できるクランプメーターを使用します。
この記事でご紹介するカイセのクランプメーターSK-7720 / 7722は、デュアル表示のLCDで、電流と電圧を1台で同時に測定・表示することができます。電圧測定の出来ないクランプメーターを使用する場合は、サーキットテスターを併用しましょう。
測定の補助品として、テストリードと車両端子の接触を固定するために、別売品のワニグチクリップ(型式:940)を使用しています。
ワニグチクリップ(型式:940)
測定方法
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❶測定の前に、バッテリーやベルト、プーリーの点検をして異常が無いことを確認します。
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❷クランプメーターのスイッチを直流A+直流Vに合わせます。
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❸赤テストプラグをV端子に、黒テストプラグをCOM端子に差し込みます。
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➍テストリードの先端には、赤と黒のワニグチクリップ(別売品)を差し込みます。
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❺赤色ワニグチクリップをオルタネーターのB端子に接続します。B端子は、バッテリーにつながる太いケーブルが付いている部分で、カバーを外した内側にある金属部に接続します。
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❻黒色ワニグチクリップはボディアース、またはバッテリーのマイナス端子に接続します。
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❼この状態で、テスターにはバッテリー電圧が表示されます。テスト車両は充電制御車なので、12.2Vと低めの電圧を示しています。
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❽エンジンを始動して、回転数を2000~2500rpm程度にします。
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❾オルタネーターの出力電圧値が表示されます。14.5V程度を示しているので正常値です。電圧値はこのように無負荷の状態で読み取ります。
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❿エンジン回転数は2000~2500rpmのままで、ヘッドライト(Hi)、エアコンブロア(Hi)、リアデフォッガーをONにして、車両の電気負荷を最大にします。
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⓫オルタネーターのB端子ケーブルにクランプします。オルタネーターの電流値は、このように負荷を最大にした状態で読み取ります。45A程度を示しているので、出力電流も正常です。※充電制御車は、バッテリーの充電量が一定以上のとき、オルタネーターの発電を停止しますのでご注意ください。
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⓬以上で出力電圧と出力電流の測定は終了です。車両の電装品をOFFにしてエンジンを停止します。テスターと車両の接続を解除し、テスターの電源をOFFにして車両を元の状態に戻します。
■測定結果
(出力電圧)
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16V以上:過電圧
※レギュレーターの故障で、電圧を正常に制御できていない状態であると考えられます。この状態では、バッテリーや電装品を故障させてしまう恐れがあります。
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13.5V~14.7V:正常値です
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13V未満:出力不足
※レクティファイアーやレギュレーターなど不具合の可能性があります。
(出力電流)
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30A以上:正常値です
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30A未満:出力不足
※レクティファイアーやレギュレーターなど不具合の可能性があります。