オシロスコープによる圧縮抜けの確認
(相関コンプレッション)
相関コンプレッションとは?
相関コンプレッションとは、エンジンの圧縮圧力をコンプレッションゲージではなく、オシロスコープを使用してバッテリーの電流波形で確認する方法です。
エンジンを始動するときは、バッテリーからスターターへの電気供給に限られるため(その他電装品には電気供給しない)バッテリーで消費される電気はスターターの負荷だけとなります。スターターへの負荷は、エンジンを始動させる力、つまりフライホイールを回すためのピストンの上下運動です。
各気筒の圧縮工程で、ピストンが下死点から上死点へ動くにつれて圧縮圧力が高くなるため、スターターの負荷が大きくなりバッテリーから流れる電流も大きくなります。それぞれの気筒の圧縮圧力は同じくらいなので、電流の変化は全気筒で同じような変化にならなければなりませんが、圧縮抜けが発生していると他の気筒よりもスターターの負荷が小さくなり、バッテリーから流れる電流も小さくなります。
この現象をオシロスコープを使用して波形で確認することができます。バッテリーの電流測定用にクランプアダプターを併用します。
コンプレッションゲージで測定する際は、インテークマニホールドなどを取り外さないと測定できない車種も多いので、まずは相関コンプレッションで確認することで、作業の効率化が図れます。
■メリット
コンプレッションゲージによる測定は、点火プラグを外して各気筒ごとに測定する必要がありますが、インテークマニホールドなどが点火プラグの上部にある車種も多く、気軽に測定できないケースが発生します。
相関コンプレッションは、バッテリーのアース線から電流を測定しますので、簡単かつ全気筒を同時に確認できます。
■デメリット
実際の圧縮圧力を測定値として測定することはできません。
■使用するテスター
この記事では、カイセのオシロスコープとクランプアダプターを使用しています。
オシロスコープ(型式:SK-2500)クランプアダプター(型式:660)
オシロスコープ用テストリードセット(型式:100-72)
※オシロスコープ(型式:SK-2500)のフルセットには上記が全て含まれています。
測定方法
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❶オシロスコープの各入力端子に下記を接続します。●チャンネル1:バッテリーの電流測定用プラス端子:クランプアダプターの赤色プラグマイナス端子:クランプアダプターの黒色プラグ●チャンネル2:点火信号取得用(気筒判別用)プラス端子:赤色テストリード(先端に赤色テストピンを差し込む)マイナス端子:黒色テストリード(先端に黒色ワニグチクリップを差し込む)
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❷クランプアダプターの電源を400A に合わせて、バッテリーのアース線にクランプします。
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❸チャンネル2の赤色テストピンを第1気筒のイグニッションコイル信号線端子に差し込み、黒色ワニグチクリップはボディアースにはさみます。
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❹オシロスコープの電源を入れてトリガーをOFFにしておきます。これは波形がトリガーレベルに掛かり、波形表示が一時的にストップしてしまうのを避けるためです。(トリガーレベルを波形が掛からない位置に移動してもOKです)
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❺オシロスコープの電源を入れて、チャンネル1の電圧軸を50mV、チャンネル2の電圧軸を2V、時間軸を100mSに設定します。
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❻エンジンが始動しないように、インジェクターのヒューズまたは、全気筒のコネクターを外します。
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❼クランキングするとオシロスコープに波形が表示されます。HOLDスイッチを押して画面表示を固定させて波形を観測します。
■オシロスコープ波形例
下図の波形例では、一定の周期でバッテリーの電流値が上昇していない箇所が観測できます。(赤矢印の箇所)
測定車両の4 気筒エンジンは、点火順序が1 番 → 3 番 → 4 番 → 2 番であるため、イグニッションコイルから点火信号を取った1 番気筒の次の次、つまり4 番気筒に圧縮抜けが発生していると特定できます。
(正常な波形例)