ハイブリッド車の整備モード(メンテナンスモード)移行手順
整備モードとは?
ハイブリッド車はメインバッテリーの充電状態が良好の時は、停車中にエンジンは始動しません。エンジンが始動しても一定の充電量を超えると自動停止してしまいます。エンジンまわりの整備や車検の検査時など、エンジンを常時かけておく必要がある時のために、ハイブリッド車には「整備モード」というエンジンを常時運転にする機能が存在します。
整備モードはスキャンツールを使用して移行することもできますが、シフトやペダルなどの複合操作で移行する「隠しコマンド」のようなものがあります。このコマンドは通常の運転時に誤って行わないように少々複雑になっていますので、この記事ではコマンドによる移行手順をご紹介します。
整備モードに移行すると…
整備モードに移行するとエンジンは常時運転となり、車種によってはディスプレイに「Maintenance mode」などと表示されたり、警告灯の点灯や点滅で確認できます。
エンジンまわりの整備や、車検時の排気音・排ガス検査など常時運転にしなければならないときに整備モードを使用します。
また、ABS・VSC(横滑り制御)・TRC(タイヤ空転抑制)といった機能がOFFになります。車検時にスピードメーターテスターなどの試験を受ける際は、TRCをOFFにする必要があるため、ご紹介するコマンド操作で素早く行えるとスマートです。
ホンダ車の整備モード(メンテナンスモード)では、VSA(ABS / TCS / EBC)はOFFになりませんのでご注意ください。
整備モード中に走行すると…
整備モード中に走行すると、トランスアクスル故障の恐れがあります。必要な整備など終わり次第、イグニッションOFFにして整備モードを終了するように心がけましょう。
移行手順
トヨタ車
-
❶ブレーキペダルを踏まずにPOWERスイッチを2回押してイグニッションをONにします。
-
❷移行したいモードの回数だけ(下記参照)アクセルペダルを全開まで踏み込みます。
2回:2WD整備モード (2WD MAINTENANCE MODE)
3回:2WD認証モード (2WD CERTIFICATION MODE)
4回:4WD整備モード (4WD MAINTENANCE MODE)
5回:4WD認証モード (4WD CERTIFICATION MODE)※アクセルペダルの操作は、全開 → 離すを1回とします。※各モードの詳細は下記の表を参照。 -
❸ブレーキペダルを踏んだ状態でシフトを「N」に合わせて、再度アクセルペダルを上記の回数踏み込みます。※ブレーキペダルは左足で踏むとアクセルペダルの操作がしやすいです。
-
❹ブレーキペダルを踏んだ状態でシフトを「P」に戻し、再度アクセルペダルを上記の回数踏み込みます。
-
❺以上の工程を60秒以内に行うと、ディスプレイに「Maintenance mode」などと表示され、整備モードに移行完了です。ブレーキを踏んだままPOWERスイッチを押すとエンジンが始動して連続運転となります。
-
❻整備モードの解除は、POWERスイッチを押してエンジンを停止すればOKです。
-
- 主な使用目的
-
・点火時期点検などのエンジン調整、車両検査時のアイドル点検CO/HC点検など。・スピードメーターテスター、2輪シャシダイナモメーターでの試験など。
- 制御内容
-
・エンジン強制アイドリング。(シフトポジションP時)・TRC装置の作動解除。・リヤモーター制御シャットダウン。(2WD走行)
-
- 主な使用目的
-
・スピードメーターテスター、2輪シャシダイナモメーターでの試験など。
- 制御内容
-
・TRC装置の作動解除。・リヤモーター制御シャットダウン。(2WD走行)
-
- 主な使用目的
-
・点火時期点検などのエンジン調整車両検査時のアイドルCO/HC点検など。・4輪シャシダイナモメーターでの試験など。
- 制御内容
-
・エンジン強制アイドリング。(シフトポジションP時)・TRC装置の作動解除。
-
- 主な使用目的
-
・4輪シャシダイナモメーターでの試験など。
- 制御内容
-
・TRC装置の作動解除。
■2WD整備モード (2WD MAINTENANCE MODE)
■2WD認証モード (2WD CERTIFICATION MODE)
■4WD整備モード (4WD MAINTENANCE MODE)
■4WD認証モード (4WD CERTIFICATION MODE)
ホンダ車
-
❶POWERスイッチをOFFモードにして、ブレーキペダルを踏まずにPOWERスイッチをONモードにします。
-
❷シフトは「P」のポジションでアクセルペダルを全開まで2回踏み込みます。(全開 → 離す → 全開 → 離す)
-
❸ブレーキペダルを踏んだ状態でシフトを「N」に合わせて、再度アクセルペダルを全開まで2回踏み込みます。※ブレーキペダルは左足で踏むとアクセルペダルの操作がしやすいです。
-
❹ブレーキペダルを踏んだ状態でシフトを「P」に戻し、再度アクセルペダルを全開まで2回踏み込みます。
-
❺ブレーキを踏んだままPOWERスイッチを押すとエンジンが始動して連続運転となります。以上の工程を60秒以内に行うと、ディスプレイに「Maintenance mode」などと表示され、移行完了です。※メンテナンス モード起動中も、VSAは通常の作動をしています。
VSAの解除方法はこちら(VSAメンテナンスモード移行手順) -
❻整備モードの解除は、POWERスイッチを押してエンジンを停止すればOKです。
日産 e-POWER
-
❶セレクトレバーを「P」レンジの状態で、POWERスイッチをONにします。
-
❷移行したいモードの回数だけ(下記参照)アクセルペダルを全開まで踏み込みます。
2回:排出ガステストモード
3回:2シャシダイモード
5回:ENG連続回転モード
6回:クランキングモード
7回:HVバッテリ消費モード※各モードの詳細は下記の表を参照。 -
❸ブレーキペダルを踏んでセレクトレバーを「N」に合わせます。
-
❹再度アクセルペダルを上記の回数踏み込みます。
-
❺ブレーキペダルを踏んでセレクトレバーを「P」に戻します。
-
❻再度アクセルペダルを上記の回数踏み込みます。
-
❼以上の工程を60秒以内に行うと各モードに移行し、コンビネーションメータ内の警告灯が点滅します。点滅する警告灯の種類は下記の表に記載しています。
-
❽ブレーキを踏んでPOWERスイッチを押してREADYにします。
-
❾各モードの解除は、POWERスイッチを押してREADYをOFFにします。
-
- 主な使用目的
-
・エンジン燃焼継続状態で実施する点検など。
- 制御内容
-
・2輪シャシダイナモメータ走行による不要な制御介入が入らないように変更する。・エンジン燃焼を継続させる。(Pレンジのみ)
- コンビネーションメータ
- e-POWERシステム警告灯
- 12V系充電警告灯
- 走行可能表示灯
- 点滅
- -
- -
-
- 主な使用目的
-
・2輪シャシダイナモメータで走行する場合など。
- 制御内容
-
・2輪シャシダイナモメータ走行による不要な制御介入が入らないように変更する。
- コンビネーションメータ
- e-POWERシステム警告灯
- 12V系充電警告灯
- 走行可能表示灯
- -
- 点滅
- -
-
- 主な使用目的
-
・エンジン回転継続状態で実施する点検など。
- 制御内容
-
・2輪シャシダイナモメータ走行による不要な制御介入が入らないように変更する。・エンジンの回転を継続させる。(燃焼、非燃焼問わず)
- コンビネーションメータ
- e-POWERシステム警告灯
- 12V系充電警告灯
- 走行可能表示灯
- 点滅
- 点滅
- -
-
- 主な使用目的
-
・エンジン圧縮圧力の点検など。・燃焼室内を掃気し、スパークプラグから燃料や水分を除去する場合。
- 制御内容
-
・燃料カットでエンジンをクランキングする。
- コンビネーションメータ
- e-POWERシステム警告灯
- 12V系充電警告灯
- 走行可能表示灯
- -
- -
- 点滅
-
- 主な使用目的
-
・強電バッテリの充電量を低下させたい場合。
- 制御内容
-
・強電バッテリから電力を取り出し充電量を低下させる。
- コンビネーションメータ
- e-POWERシステム警告灯
- 12V系充電警告灯
- 走行可能表示灯
- 点滅
- -
- 点滅