イグニッションアナライザーでイグニッションコイルの不良をチェック
イグニッションコイルが高電圧を発生する仕組み
スパークプラグに火花を飛ばすためには、2万~3万Vくらいの高電圧が必要です。バッテリーから供給される12Vの電圧を、誘導コイルの原理を利用して、スパークプラグの放電に必要な高電圧に昇圧しているのがイグニッションコイルです。
イグニッションコイル内部は、鉄心に2つのコイル(1次コイルと2次コイル)が巻かれており、ECUの信号でイグナイター(制御スイッチ)がONになると、バッテリーから12Vの電気が1次コイルに流れ、鉄心は磁束をおびた電磁石となります。
点火タイミングになるとECUの信号でイグナイターがOFFになり、電気の流れが遮断され磁束がなくなります。すると磁束を維持しようとする力が働いて、1次コイルには瞬間的に300Vくらいの逆起電力が発生します。(自己誘導作用)
このとき電磁誘導により、同じ鉄心に巻かれた2次コイルに、コイルの巻き数に応じた電圧が発生します。(相互誘導作用)
2次コイルは1次コイルの100倍程度の巻き数となっているため、2次コイルの電圧も100倍程度の3万Vくらいまで昇圧され、その高電圧をスパークプラグに供給しています。
■使用するテスター
イグニッションアナライザー(型式:KG-300)測定方法
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❶本体上部のコネクターにプローブを取り付け、プローブの先端にセンサーを差し込みます。センサーはダイレクトイグニッション用とハイテンションコード用があります。テスト車はダイレクトイグニッションなので、こちらのセンサーを取り付けます。
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❷エンジンタイプを選択します。CYCLEスイッチを押すたびに、4サイクル → 2サイクル → 同時点火に変わります。
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❸エンジンを始動します。イグニッションコイル上部にエンジンカバーなどがある場合は、事前に外しておきます。
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❹測定モードと表示タイプを選択して、ダイレクトイグニッション上部にセンサーを当てます。信号を検知できない場合は、センサーの位置や当て方を調整してください。
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測定モードの選択
MODEスイッチを押すたびに、点火時間 → 通電時間 → エンジン回転数 → 点火2次電圧に変わります。①点火時間:点火の始まりから終わりまでの時間を測定。②通電時間(ハイテンションコード用センサー取付時はドエル角):1次コイルに電流が流れ始めてから、遮断されるまでの時間を測定。③エンジン回転数:エンジンの回転数(RPM)を測定。④点火2次電圧:点火2次電圧レベルの表示。(各気筒ごとの電圧レベルを比較するための機能なので、実際の電圧値とは異なります)
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表示タイプの選択
VIEWスイッチを押すたびに、チャート表示 → 比較表示 → 数値表示 → 波形表示に変わります。①チャート表示:測定値を折れ線グラフとして時系列に表示。時間経過による変化を確認。②比較表示:最大値/最小値/平均値を測定しグラフ表示。並べて表示されるので、シリンダー毎の比較ができます。③数値表示:3つの測定項目を同時に数値表示。メイン項目はメーターで視覚的に表示します。④波形表示:時間軸上に信号振幅を表示。オシロスコープのように視覚的な確認ができます。
測定表示例
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正常な波形例
●測定モード:点火2次電圧
●表示タイプ:波形表示
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不良時の波形例
1. ピーク電圧が高い
●測定モード:点火2次電圧
●表示タイプ:波形表示 -
2. 他の気筒よりも電圧値が高い
●測定モード:点火2次電圧
●表示タイプ:チャート表示チャート表示で3気筒エンジンの点火2次電圧を3つ連続して測定。2番目の気筒だけが異常な電圧値を示しています。
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3. 他の気筒よりも点火時間の変動が大きい
●測定モード:点火時間
●表示タイプ:チャート表示チャート表示で4気筒エンジンの点火時間を4つ連続して測定。3番目の気筒だけが点火時間の変動が大きく異常と判断できます。 -
4. 電圧値が高く、最大値と最小値の変動が大きい
●測定モード:点火2次電圧
●表示タイプ:比較表示 -
5. 点火時間が短く、最大値と最小値の変動が大きい
●測定モード:点火時間
●表示タイプ:比較表示